映画について:「きみの色」

「きみの色」(監督 山田尚子 2024) 雑感

 2024年のお気に入りの作品です。

 光の三原色がモチーフで、青・きみ 緑・ルイ 赤・トツ子になっています。
 光と音のクロス・モード(視覚・聴覚)は、感情とパラレルになっているのが優しいです。
 トツ子は、周りを照らす日の光(金色)であり、白ネコ(月の銀・白)と共に、3人(色)をつなぎます。太陽の光と月の光は、教えの場面にあったように、人(惑星)を傷つけません。トツ子(太陽)は白ネコ(月)と仲が良いです。トツ子自身は、自分を惑星と思っているようで、それも当たっているのですが。

 バンド作りのとっさの呼びかけは意識を超えたつなぐ働きです。とっさに反応するのがトツ子らしさ。
 「きみちゃんて呼んでいいかな?」は、意図してつなぐ動きです。小さな子どもが友だちをつくりたい時の宣言のよう。

 ルイ君はセクシャルでない男の子です。トツ子は、ゆっくりと自分のペースで子どもの世界から大人になっていきます。それには守りが必要で、この映画ではミッション・スクールが枠としての守りになっています。トツ子は素直に祈ることができ、また、ウソをつけるのがよい環境です。

 太陽系の描き方が面白いと思いました。太陽自身が動いて惑星も螺旋を描いて共に動く教材?がとても新鮮で、太陽がトツ子に思えます。「ワクワク惑星」が、太陽(トツ子)が発見した、青い惑星の「きみ」。「きみ」は太陽(トツ子)の自己対象でもあるんなあと思います。まずはブルーな「きみ」の心・色に惹かれ、後にはルイへの「きみ」の恋心の美しさに圧倒され、トツ子は少し大人になっていきます。

 奉仕活動後の久しぶりの再会は、光の三原色がひとつになる喜びで良いシーンです。
 3つでひとつであり、各々でもいられることの大事さがあります。トツ子は周りを照らしていましたが、二人の色から自分も照らし返されて、最後に自分自身の色・赤が見えるようになりました。

 ✳︎「自己対象」はコフートの自己心理学の鍵概念です。